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みんなの糖尿病教室

2022.11.30 コラム

みんなの糖尿病教室

【 みんなの糖尿病教室 】のページにお越しいただきありがとうございます。

このページは、糖尿病に関して、様々な角度から、最新の情報をお届けするものです。

コロナウイルス対策も糖尿病療養も、相手を知ることで、「自分スタイル」で生活できるのだと思います。明日から生活に使える知恵のページにしていただければ幸いです。

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糖尿病の食事療法と
よもやま話

統計大好き!医師 松崎慈子の糖尿病コラム

食事療法は糖尿病のある人にとって最も興味のある話題ではないでしょうか?
糖尿病の食事療法についてはたくさんの書籍や報道がありますね。ご自分の健康管理に真面目で勉強熱心な方にとって書籍や報道で○△を食べると血糖が下がった!
△○を食べなければ血糖が下がる!という文句はとても魅力的に聞こえて何か自分の生活に取り入れてみようかしら?とどなたも一度はお考えになることでしょう。

一方で、医療機関でご提案する糖尿病の食事療法は、書籍や報道よりもどうも歯切れが悪くお感じになるかもしれません。この歯切れの悪さは日本の糖尿病ガイドライン(1)・米国、欧州のステイトメント(2)で、糖尿病のある人に真にメリットのある総エネルギー摂取量や栄養素のバランスは、科学的根拠が十分でなく、個別化を図りながら適宜変更すべきと記載されていることに起因するかもしれません。

ヘモグロビンA1c(数ヶ月の血糖の平均の指標になる数値です)が低下する、あるいは体重が減少するというデータを示すことは比較的簡単ですが、その食事療法を長年継続したときに生命予後が改善するかどうかを示すのは大変難しいことが一つの理由でしょう。(検査値が改善することよりも生命予後が改善することに当然!!重きがおかれます)また、研究をするには、食事内容を正確に申告していただくことが大前提ですが、少なくともズボラで極めて大ざっぱな私には、1週間分の食事すら正確に申告する自信がありません。さらに、強力に生命予後を改善する薬物の開発が進み、食事療法だけの効果の差が示しにくくなったことも背景の一つです。
このように、薬剤の有効性を示す研究を行うよりも、食事療法の有効性を示すことはずっと難しく、我々の振る舞いを変えるに値する研究が少ないと思われます。

このようにくどくどと言い訳をすると、結局どうすればよいのかを示してほしい!と診察室でお叱りを受けることがあります。確かに。ごもっともなご指摘です。
そこで、糖尿病診療ガイドライン2019(1)で前回から変更があった、総エネルギー摂取量の算出についてピックアップしご紹介します。
統計大好き!医師 松崎慈子の糖尿病コラム

総エネルギー摂取量は目標体重(kg)とエネルギー係数(kcal/kg)を掛け合わせて算出します。
目標体重は以前は一律のBMI 22(体重÷身長2。身長・体重のバランスの目安です)を用いていましたが、総死亡が最も低いBMIは年齢によって異なり、一定の幅があることが考慮され、年齢に応じて算出するよう変更されています。
具体的には高齢者でこれまでよりも目標体重を大きく設定してもよいことになります。
エネルギー係数についても、高齢の方のフレイル予防では身体活動レベルよりも大きい係数を設定できるようになりました。

前述のとおり、総エネルギー摂取量は目標体重とエネルギー係数の掛け算のため、特に高齢の方では、そのいずれもが以前よりも大きく設定され、これまでよりも摂取すべき総エネルギー摂取量は多く算出される可能性が高くなります。

なお、糖尿病、非糖尿病でエネルギー消費量に差異はないため、糖尿病であるというだけで総エネルギー摂取量を減らす必要はありません。
しかし本邦では肥満を伴う糖尿病が増加傾向であり、エネルギー摂取量を見直し肥満を是正することが重要ともされています。
体重よりも体脂肪率と総死亡との関連が強いとの報告もあります(3)。
当院では、体組成計で筋肉量や体脂肪率を測定することも可能です。ご興味のある方は、お声かけください。

糖尿病診療ガイドライン2019は、個人の嗜好や食文化を尊重し食事を楽しめるよう個別に柔軟に対応するよう、呼び掛けています。
先日家族でロシア料理レストランにお邪魔しました。どの料理も珍しくて大変美味しくいただきましたが、食材も味付けも調理方法も何もかも和食とは異なるのだ!と興味深く思いました。どうやらわれわれ日本人は、世界でもとてもユニークな食事をしているようです。
私の育った香川県ではお正月にはあんころ餅のお雑煮をいただきます。
ひな祭りには母が丁寧に殻をとった小エビの入ったちらし寿司を作ってくれました。
お彼岸には青のりときなこの綺麗な2色のおはぎを食べて、運動会ではおむすびがぎっしり詰まったお重を家族みんなで囲んだ思い出があります。食事は毎日の生活の一部であり、背景にはその地域や家庭の文化や宗教が複雑に影響しているでしょう。
何が真にメリットがあるのかが見えにくい食事療法ですが、限られた科学的根拠と患者さまのリクエストをつなぐのが私たち医療者の役割ととらえ、みなさまの生活の全てが糖尿病に支配されてしまわないよう、継続可能で的を射たちょっとした工夫をご提案をしたいと考えています。外来の待ち時間に行う栄養指導もぜひご活用ください。

引用文献
(1)糖尿病診療ガイドライン2019 http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
(2)Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes, 2022.A Consensus report by the American
Diabetes Association(ADA)And the European Association for the Study of Diabetes(EASD)
(3)Padwal R et al : Relationship Among Body Fat Percentage, Body Mass Index, and All-Cause Mortality.
Ann Intern Med 164: 532-541, 2016

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